ボタン

北の方へ二十メートルほどいくとボタンがあって
それをきみは押すことができる
ただし、何の反応もない
君はボタンを押せるだけだ
それでも君はボタンを押す
何度も何度も押しているうちに
やがてボタンも君に気をゆるすようになり
君達はなかよくお喋りなどができるようになる
押しても反応しなかったボタンが
ちょっとづつ反応するようになる
君はボタンを押す
二十回に3回ぐらいボタンは反応する
それはため息だったり
ささやき声だったりする
君はうれしくなり
何度も何度もボタンを押す
やがてボタンはこわれ
君はボタンとおしゃべりすることもかなわなくなる

沈黙のなかで
それでも君はボタンをかちかち押しつづけなければならない

君はそれに耐えなければならない。